半袖
夏日に。
暑いからくっつかないで、と年上の彼女に言われた。
普通だけど、と返す僕。
今まで通りに接していたつもりだが、半袖になったからだろう。腕と腕が肌で直接触れることが増えた。そのせいだ。
じゃあ手繋いで歩くのは?
ヤダ。
どして。
大人だよ、私達。大人はね、腕を組むの。
じゃあ無理じゃん。
うん。あきらめて。 彼女が少し距離をとって歩く。ちょっと寂しい。
それにしても日差しが強い。街路樹の影がありがたい。まだ5月なのにこの暑さはなんだ。先が思いやられるな。
ん、先?
じゃあさ、梅雨で雨の日にさ、傘が一本しかなかったら?相合い傘でくっつかざるを得ないときは?
んん、と彼女は少し考えて、
許す。と言った。
そうだよね、不可抗力だからしょうがないよね。
でも、相合い傘は歩きづらいから、基本的には別々の傘ね。大人だし。
も、もちろん。あくまでも緊急のときの話だから。
せっかくだから買っていこうか、傘。お洒落なやつ。
今から?
今から。
僕も?
そう。わたしのとあなたのと。2本。
う、うん。わかった。
お洒落な傘っていくらぐらいするのだろう。いつもは、コンビニのビニール傘しか買わないから全くわからない。
できれば安いのでいい。どうせ持って行くつもりはないから。
5/28/2024, 12:29:34 PM