「ひそかな想い」
ねぇ、あの頃のこと忘れちゃった?
私達がまだ親友だった頃のこと。
手紙を渡し合っていた頃のこと。
ずっと仲良しでいようね、って誓ったあの冬のこと。
小学4年生の時、初めて同じクラスになった私とあなたはいつの間にか自然と仲良くなっていて、お互いの家に遊びに行ってはゲームやお菓子パーティーをした。
頻繁に手紙のやり取りをしたり、誕生日の時にはちょっとしたプレゼントを用意したり楽しかったなあ。
賢くてかっこいいあなたみたいになりたくて、あなたと同じように私も塾に行きたいと両親に言った、あの時の選択が人生で一番良かった選択だったと思う。
あなたが塾に通っていなかったら、そもそも塾の存在を知ることがなかったから、そのきっかけをくれたあなたに本当に感謝してる。
懐かしい小学4年生のあの頃。
忘れちゃった?って聞いたけど、私もだいぶ忘れてしまっている。
ねぇ、私が何か悪いことしたかな?
小学4年生の時からクラスがまた離れて、お互い勉強が忙しくなって遊べなくなった。
でも、私の知らないところであなたは頑張っているんだと思って、あなたに負けないように私も勉強に励んだ。
ずっと仲良しでいようね、と約束していたから離れていても私は何も怖くなかった。
やっと同じクラスになって再会した小学6年生の時。
はっきりとは思い出せないけど、確かにひどい言葉をぶつけられたのは覚えてる。
怒りとか、苛立ちとかじゃなくて。
最初に浮かんだ感情はただただ「なんで」という疑問で心の中は悲しみでいっぱいだった。
わからない、何が気に障ったのか。
私が気づかなきゃいけないことなんだろう。
気付けないから仲直りできないんだろう。
とりあえず謝ってみることを考えた。
でも賢いあなたは私の謝罪が薄っぺらいものだとすぐに気がつくだろうと思ってやめた。
私にどれだけ反省の気持ちがあっても改善点が分からなければ謝罪は意味を為さない。
それにこれ以上関係を壊したくなかった。
もうずっと前から私の知らないところで壊れていて、あなたの変化に私がずっと気づけずにいただけかもしれないけど。
小学校を卒業した後も同じ学校に合格して、中高同じ学校に通ってあなたと出会ってもうすぐ8年。
なんだかんだ腐れ縁だった。
あなたと同じクラスになることはなかったけど、たまに廊下ですれ違ったり帰り道に見かけたりした。
そのたびに避けられているのはそれだけ嫌われているのかと少し悲しくなるけど、あなたの方がきっとつらかったのだろうと思って耐えた。
もう私の何が悪かった、と聞いても思い出せそうにない。
今日でこの学校に来るのももう終わり。
長いようで短かった学校生活。
廊下の窓から遠くをぼんやりと眺める。
「おーい、皆で写真撮ろうよ」
友達の声で夢から覚めたように、私は走って聞こえた方へ向かう。
その時あなたとすれ違った後、私はあなたを見ていない。
少し目元が赤く腫れたあなたもまた私ではない友達の元へと駆けていった。
2/21/2025, 9:59:43 AM