崩壊するまで設定足し算

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▶46.「風邪」
45.「雪を待つ」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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岩に隠れるようにして造られた施設。
家具が劣化して崩れるほどの年月が経っているのにも関わらず、
メインルームと思しき部屋の大型機器は稼働した。
何か準備している様子なので、ひとまず人形は中を探検することにした。

この階で見ていないのは隣の部屋が最後のようだ。
向かいには下へ降りる階段が見える。

‪✕‬‪✕‬‪✕‬が部屋に入ると、そこは資料室のようであった。
ぴっちり戸が閉められた棚が規則正しく並んでいる。
素材も今までの家具とは違うのか劣化は少ない。

貼られていたラベルの文字は読めなくなっていたので、
人形は手近なところから開けた。

中には製本された冊子が収められており、見たところ無事なようである。
表題は人形には意味のわからない言葉もあるが、
この国の名であるフランタ国と、山を超えた先にある隣国のイレフスト国に関するものが多いようだ。

ちらっと見ては閉めてを繰り返し、‪✕‬‪✕‬‪✕‬は奥へと進む。
ひらけたスペースに出ると、
書き物をするためであろう机が床に崩れていたが、
その近くにある棚はまだ形が残っている。
先程までと違って収められているものも劣化が進んでいる。

慎重に取り出し、最初の部屋に戻って読むことにした。

どうもこれは日誌、というか日記に近いものらしい。
その日のことが短く綴られている。

「ここフランタの山は、イレフストと違って雨雪が少ない」
「早く帰りたい」
「フランタの○○‪✕‬に関する技術は素晴らしいが、私たちだって負けていない」
「また冬がくる」
「研究は順調だ」
「局員の1人がクリ・ス・マスに誕生日を迎えると知った」
「最近研究所の雰囲気が暗い」
「普段国のために働いてくれているのだから、このぐらい」
「みんな賛同してくれた」
「風邪をひいたみたいだ」
「当日が楽しみ」
「なかなか良くならない」

その先は劣化が進んでいて読めなかった。
ここに居たのは、隣国、当時は敵国の人間だったようだ。

大型機器の方は進みがゆっくりで、まだ時間がかかる。
人形はエネルギーの残量を確認すると、部屋の隅で休止形態に入った。

12/17/2024, 4:13:14 AM