ゆかぽんたす

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突然、学校が嫌になっちゃって。
行きたくなくて、でも家に帰れなくて。
ふらふらしてたら近所の人に見つかりそうだったから、少し歩いて河川敷に行ったんだ。
いつも電車を乗ってる時に見える場所で、春には桜がいっぱい咲いてたのを覚えてる。でも今は、秋だからそんなことなくて、ひっそり寂しい景色だった。
散歩してるどっかのお爺さんと水鳥だけだったから安心した。ここなら、こんな時間に中学生が彷徨いてても通報されることもない。
適当な所に座ってみた。今日はちょっと風が強め。目の前をビニール袋が飛ばされてゆく。ぶわっと、吹いた風がいろんなものを飛ばしていった。視界の中にふわふわ揺れてる集団が入る。ススキだ。風に揺られてる穂が、まるで手を振ってるみたいに見えた。なんだか可愛くて、ずっと見てしまった。ずっと、ぼーっと、何時間も。いいんだ、今日は学校に行かないから。
そして気づいたら太陽は傾きかけていた。時間が経つのはあっという間。明日もこんなふうに流れてゆくのかな。何かをしても何もしなくても、みんな平等に時間は流れる。明日学校に行っても行かなくても、同じように過ぎてゆく。
ススキが優雅に揺れてる。それを見てると、そんなに僕の悩みは大したことないのかな。そう思えてくる。
明日は、学校行ってみようかな。あんまり気負い負けしないで、なるべく普通に。その普通が、案外難しいんだけど。
きっと、なんとかなるだろう。大丈夫、きっと。なんとかなる。呪文のように言い聞かせてようやく立ち上がった。秋の河川敷ってなんだか落ち着くな。少し心にゆとりが持てたかも。だから本当に、なんとかなりそうと思えてきた。明日はきっと、大丈夫。

11/11/2023, 9:31:24 AM