『渡り鳥』
「やぁやぁ」
休憩中にやってきたのはワタリドリと呼ばれるやつだ。
「もうそんな季節か」
「ここはもう暖かいねえ。ちょっとジメジメするけど」
思い切り羽を伸ばしてあくびをしながらワタリドリは語る。
「今年も色んなとこ回ったんだろ?どうだった?」
「あぁ。そりゃもう___」
ワタリドリは暖かいところが好きなやつで
ここら辺が寒くなると暖かい場所へと飛んで行く。
俺より世界を知っていて俺より生きるのが楽しそうなやつだ。
俺は遠くへ飛ぶ勇気も体力も無いから
こうして土産話を聞くのが楽しみだ。
一通り話し終えたワタリドリは一呼吸置く。
どうやら次で最後の土産話になりそうだと独り言を零す。
「なら次は俺が飛んで土産話を聞かせるよ。」
ワタリドリは甲高い声で笑う。
なら、羽を伸ばして待っていると言って
一人でまた甲高い声で笑った。
語り部シルヴァ
5/29/2025, 10:39:21 AM