年が明けてから数日がたち、春の兆しが胎動をはじめる。
寒空に雲は無く、大地には草も無い。
ただ、痩せた木々があるばかり。
かわいた風はぞっと寒い。
眺望絶佳な氷の湖にそっと耳をあてると、ずっとずっと奥の方から水の揺らめく音が聞こえてくる。
微かに溶け始めた清水が、湖の底で生きている。
麦はそろそろ芽を出しただろうか。
都会暮らしの私には縁のないことなのだけれども、冬晴れなんて聞くと、どうしようもなくそんなことばかりが浮かんでくる。
都会には自然を想起させるものがない。だから、想像でしか書けない。
想像の中の私は限りなく美しい世界にいる。
あまりにも澄みきった銀の世界はそれ自体が凍りついたみたいに、永遠に私の中にとどまっている。
あたたかくて、心地よい。
知らないからこそ、この晴れた冬の日は綺麗なんだと思う。
大人になったら、きっと想像の世界は溶けてしまう。
きっといつかは現実を知ってしまうから。
その時に、もう一度同じ文章を書けるだろうか。
本当の冬景色を知った私は何歳になっているだろうか。
いつかこの気持ちが晴れる日はくるのだろうか。
そう考えてみる。
1/5/2025, 1:15:31 PM