小絲さなこ

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「海沿いの町」



幼い頃、何度も何度も見ていた夢があった。


一緒に遊んでいる男の子は、たぶん幼馴染なのだろう。なんとなく、そんな気がした。
そして、その夢の中で住んでいるのは海沿いの町。
高校生になるまで、本物の海を見たことなんてなかったのに。



自分でお金を稼げるようになってから、海沿いの町へと旅をするようになった。

大きくなるにつれ、その夢を見ることはなくなってしまったが、夢に出てきた町が何処なのか知りたかったのだ。
そこに行けば、その男の子と会えるような気がしたから。


何年もかけて海沿いの町を巡ったが、その町を見つけることはできなかった。


所詮は夢か。
そう思って諦めかけていたとき、夢の中の男の子にどことなく似ている男性と出会った。

トントン拍子で話が進み、出会って半年もしないうちにプロポーズ。


連れて行かれた彼の故郷は、島で、何度も何度も見ていたあの夢の町とそっくりだった。





────遠い日の記憶

7/17/2024, 3:25:35 PM