六月の帰路

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六月のままで止まっていたカレンダー
何も知らないままでいたい六月に
血が塗られる六月
それでもいいからと大丈夫だからと
吐息は止まらない

とても素敵な六月のままでいたいのに
どうして君はそんなに慌てているの?
君は慌ただしく、蝉の声を殺している

この部屋は素敵な六月だよ
今日は何日でもない六月に
鳳仙花を描いていよう

進まずに、たくさんの物語を書いていよう
そっちの方がいいよ
世界が滅亡しても
私は滅亡できないの

たまには遊びに行こう
ベランダに出ると紫陽花が咲いているだろう
風邪をひいていたけれど
それはとっても綺麗な紫陽花
強い雨が降り注いで、僕はかえるに鳴る

明日の意味を捨てて
この息だけを飲み込んでいけばいいよ
何も考えなくていいから
少しだけ眠っていよう
周りにだれもいなくなっても
風が落ちても、赤い雨が降っても
ただ目を閉じていてもいい

夢の中の六月
飴色の雨が甘くなって
ソーダ味のわたあめを食べにいこう
止まらないピアノを鳴らして
人間ごっこをする

映画を見ていると
なぜだか君ばかり映っている
どうして君は雨が降っているのに
悲しい顔をしているのだろう
傘を棄てて、君は飴を食べていた
それは息苦しそうに
ずっと心配してしまうよ

六月だけでいいのに
君はカレンダーを捲って
雨になる
六月に流れる雲に乗らないことは
そんなにいけないことなのかな

手紙を雨に流しても
君は何も言わなかった
雨なのに、どうして花は踊らない
僕には分からないままで
ただかえるのままで鳴いていた

素敵な六月にするために、
たくさんの影を消していく
美しさなんていらないと君が言うから
僕は紫陽花を踏み
雨を踏み
六月のカレンダーを踏んでいる

9/11/2022, 4:52:48 PM