今日が始まる数分前。静かな街にコツコツと彼の足音だけが響く。
毎晩違う女を連れ帰ってきては借金を膨らませる親父に呆れて家を飛び出した彼は、今日も無事に朝が迎えられそうな事に感動していた。
「明日の飯代……はバイト先の先輩に縋るか」
自分の働いた金は全て親父の借金に消えていた事を知り、温情で周りの人から金をたかる事に成功した。明日は久々に美味い飯へありつけそうだ。
夜明け前、自販機の下に100円玉を見つけてにやにやしながら身を隠すように路地裏へ消えていった。
『夜明け前』
9/13/2024, 12:07:12 PM