三神狐

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『空は炭酸水でできている』
と誰かが言った。

昼はソーダ、夕暮れはオレンジ、夜は原液に近いコーラの味がついており、とても美味。ただし、飲みすぎるとそのまま溶けて消えてしまう。
飛行機やヘリコプターは、溶けてしまわないようにプラスチックで出来ており、雲は炭酸水の泡らしい。

本当かどうか気になった男は、白い小さなヘリコプターを飛ばした。
やがて軽い駆動音と共に空へ入り、ヘリコプターが耐えれる限界まで登ると、その場に停止させた。
男はヘリコプターの運転席から離れ、扉を開ける。
視界には、息を呑むような一面の空色。
男はガラスのコップで空をすくい、一気に飲み干す。
濃厚な美味さが口の中に瞬時に広がり、そして後を引く間もなく喉の奥へ、爽やな喉越しと共に消える。
あっという間の出来事であった。

「なんて美味しいんだ!」

感動した男は、思わず身を乗り出した。
ズル、と足が滑る。
「あ」と言う間もなく男は空へ落下し、
そのまま空を身体いっぱいに受けた。
飲んでも飲んでも止まぬ満足感と共に、男は空へ溶けていった。

残ったのは、プルプルという音で存在を主張する、小さな白いヘリコプターのみであった。

5/20/2025, 11:15:21 AM