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【みかん】

むかし、とても意地悪なおじさんがいました。
ある日おじさんの家に、段ボールがとどきました。
むかしの知り合いが送ってきたものでした。
玄関で段ボールを開けてみると、中にはたくさんのみかんが入っていました。
嬉しくなったおじさんはニヤニヤと笑いました。

と、誰かが家のドアをノックしているのが聞こえてきました。
おじさんは舌打ちを一つすると、ドアを開けました。
そこにはお隣に住んでいる佐藤さんがいました。
回覧板を届けにきたそうです。
佐藤さんはみかんを見て、「あっ、おいしそうですね」と言って目をらんらんと輝かせています。
それを聞いたおじさんは、
「お前には一つたりとも渡さねえぞ!」と佐藤さんは怒鳴りつけました。
佐藤さんは悲しそうな顔で帰っていきました。

おじさんは佐藤さんが閉めたドアを睨みつけると、段ボールを部屋に持っていきました。
「さて、このみかんは全部おれのものだ」
しかし、一つみかんを手にしたところで、ぐにゅりとおかしな感触がしました。
みかんのおしりの部分が白くなっていたり、青黒くなっていたりしたのです。
「カビてるじゃねえか!」
おじさんは怒りながら段ボールをひっくり返し、みかんを全て畳の上に出しました。
そして一つ一つ確認してみると、なんとみかんは全部カビていたのです。
おじさんのむかしの知り合いは、おじさんにたくさんの意地悪をされたので、その仕返しをしたのでした。

それから二年ほど経ちました。
おじさんはカビたみかんの感触が忘れられず、みかんを食べられなくなりました。
意地悪な性格は今も治っていませんが、みかんを手に入れた時は、佐藤さんに快くあげるようになったということです。

12/29/2023, 10:30:13 AM