とよち

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いつ頃からだろうか。夜に特別感を感じなくなったのは。小学校までは夜中まで起きているのが、校則上悪いことだったゆえにカッこいいと思っていた。夜までおきて、ゲームをしてお菓子を食べたり友達と電話をしたりする。それが特別で最高だった。そして学校で、「何時まで起きていたか」のマウントの取り合いをして勝つと大人っぽいと自分の中で誇っていた。そして大晦日にまで行くと心情はリッチの極みであった。起きていても親には起こられず、笑うとお尻をしばかれる番組を見ていようが、好きなものを食べていようが、ゲームをしていようが、何をしようが自由なのだ。そんなのは10歳前後のガキには、最高級のディナーなんかより百倍も二百倍も上の極楽浄土で、この世の全ての喜びを感じた気がしていた。それがどうだろう。今ではそんなこと当たり前なのだ。逆に友達との間では「どれぐらい早く寝ているか」の話をたまにするし、早く寝ていたら偉いと褒められるぐらいだ。大晦日も勿論特別で楽しいが、前までのように起きていられる喜びは味わわなくなった。勿論大人になっていつまでも起きていることに喜びを感じているのはおかしいのであたりまえなのかもしれないない。だが、夜更かしをするのは健康にいいことではないし子供ながらの喜びを感じられなくなったのは寂しい。まあ、長い間夜更かしは続けているので日々の生活で劇的に眠くなることはほぼなくなったが、本当にそれは大人になったといえるのかどうかわからない。「これは悪いことだ」と思っていてその悪さを楽しんでいた頃と、「悪いことだ」とも思わなくなって、自分の健康などには全く気を遣わず当たり前になってしまっている今と、さほど変わらないのではないか。逆に言えば「悪いことだ」と気がついている昔の方が大人に近付いていたのかもしれない。私は前から「まだ子供だった」とはよく思っていたが「前より子供になっていた」とは考えたこともなかった。「そうか、私は前より子供になっていたのか」そう呟き私は電気の消えたくらい天井をぼうっと見つめた。そうしてしばらくしてからスマホの時間をみる。もう十分遅い時間だ。「これが当たり前になっていたのか。」私はため息をつきながらそういい布団にくるまり瞳を閉じた。「人生はまだこれからだ。特別な夜に感謝しよう。」

「特別な夜に」

1/21/2024, 2:05:17 PM