Ayumu

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「ここ」より先のラインにはいかない。
 ちょうどいい距離感を保つほうが、きっとお互いにとって最良だから。
 君はどうかいつまでも、そのままで。


「お前はほんっとーに馬鹿だな」
「いつものお説教かな?」
「まーだあいつには綺麗なままでいて欲しいとかくだらねーこと考えてやがんだなって呆れまくってんだよ」
「それはそうでしょ。あんな純粋な子の隣をずっと歩けるのは同じくらい綺麗な人じゃなきゃ」
「……あのさあ」
 親友は珍しく、俺をまっすぐに見据えた。呆れも怒りもない。
「お前、あいつのことわかってなさすぎ。っていうかわざとわかろうとしてないよな」
 表情が変に固まってしまったかもしれない。
「あいつはお前の前でだけ、綺麗なままを演じてるだけかもな? お前が臆病だから」
 無意識に首を振っていた。
 ほら、思い出す彼女の笑顔はいつだってきらきらしている。演技だなんて思えない。
「あいつが大事で仕方ないなら、いい加減前に進めよ。それがあいつにとっても『最良の選択』だ」
 うまく呼吸ができない。
「……お前、あの子からなにか、聞いてるのか」
 何とか絞り出した問いに、親友は答えなかった。


お題:愛する、それ故に

10/8/2025, 2:27:20 PM