夢見る少女のように
私がまだ現実を見るよりも夢を見る少女だった頃、白馬に乗った王子様のエスコートを本気で待っていた。いつしかそんな理想が打ち砕かれて、初恋がけちょんけちょんに終わった時、もう何にも希望を抱かずに恋愛を諦めた。男性不信が高じて決めた女子校で、圧の強い女子たちにあれよあれよというまに王子ポジを割り振られていつのまにか自分がエスコートしなければならない側に立たされていた。いやだ、ドレスを着たい。王子になんてなりたくない。そうして、王子にも姫にもなれずに働いていた。良いことばかりではないし、常に気を張っているのは疲れるが、多くの人にそのままで良いと認められるのが嬉しかった。ああ、幸せだなと思っていた時に出会ってしまった。その人は「そもそも馬乗れないし、王子になんてなれないけどいいの?」と不思議そうにしていた。だけど良いのだ。白馬に乗っていなくたって、サーベルを持っていなくたって、この人の横にいる私は姫のように幸せな顔をしているだろうから。
6/8/2025, 8:44:14 AM