初めに異変が起きた日から、今日は何日ほど経ったのか…。
管理者として日付感覚を狂わせるのは如何なものか、とは自分でも思うが、とはいえ私も身体は人間だ。時の流れの異なる世界を短いスパンで行き来すれば、どうしても時間感覚が混交してしまう。
まぁ幸い、異変収束の為に自ら立ち上がった者達がいたので、この世界での表立った行動はそっちに任せている。異世界に迷い込んだ経験を持つ彼らだ、わざわざ私が加勢しなくとも、命を落とすようなことはないだろう。
…いや、加勢する必要はもうない、と言った方が正しいか。
光の消えた四白眼で、目の笑っていない笑顔だけを顔に貼り付けながら、私に対する黒い感情をその瞳から垂れ流す黒幕が。
私というたった一人を見つける為だけに、この世界の秩序をかき乱し、多くの人間を捨て駒として利用した、人の姿をした人ならざる存在が。
私の目の前に、いるのだから。
……世界が、二つに分かたれる前。
「一つ前の世界」で、私と対となって世界を守護していた存在。
感情や衝動を司る私に対して、理性や秩序を司っていた、私の片割れ。
無愛想な私に対して、表情豊かだったはずの彼女。
だが、その面影は…目の前の彼女には、どこにもない。
…なぜ、そんなにも変わり果ててしまったんだ?何がお前を、そんな醜い存在に堕としたんだ?何を思って、お前はこの世界を…
…いや、無駄なことは考えるのはやめよう。
「一つ前の世界」は、もうとっくに消え失せた。あの世界のことを覚えてるのは、目の前にいる彼女を除けば、管理者である私くらいしかいない。
それに、彼女…否、ヤツは、私を殺し、この世界を書き換えようとしている。…この世界の、破壊者だ。
私はヤツを消さねばならない。この世界の、管理者として。
(『無題』―守護者だった管理者と、守護者だった破壊者―)
11/9/2024, 11:40:18 AM