何も知らない、知らなくていい
白い大きな花が咲く垣根の向こうにあなたは立っている。もう夕暮れで朱色の光があちこちに差して、影を暗く落とす。
名前を呼んでみた。花が邪魔をしているのかあなたは辺りを見回すだけでこちらを見ない。
もう一度呼ぼうとして、口を塞いだ。僅かな隙間から見えたあなたの姿はとても綺麗だったから呼べなかった。
遠くで私を呼ぶ声がする。ずっと、その声で、私だけを呼んでほしい。でも、もう駄目なんだ。
傾く日に背を向けるのは私だけでいい
光の中で笑うのはあなたであってほしい
「こんな現実なんて知りたくなかった」
その言葉で救われる私がいることも、全て忘れて頂戴。
【題:遠くの声】
4/16/2025, 11:29:09 AM