⸺ふ、と。
あなたが離れていく。
先ほどまで触れていた唇はほのかにあたたかくて、あなたの体温が確かにそこにあったことを肯定している。
名残惜しさなんて微塵もなく離れたあなたの目は確かに私を捉えていて、その目を覗く私がひたすらに醜いものに思われた。
きれいなあなたを穢らわしいものにしてしまったような気がして、無意識に言葉を紡いでいた。
あなたは驚いたような目をして、それから優しく微笑んで、それから、それから。
そうしてもう二度と、あなたの目を見ることはなかった。
4/6/2024, 2:20:04 PM