ひとつ、ふたつ。
視界をぼんやりと歪ませては落ちていくもの。
みっつ、よっつ。
それは窓越しの黄色い街灯を反射して光る。
じんわりと湧き上がっては、ほろりほろりと、時には手の甲を転がり落ちて。
いつつ、むっつ。
薄暗い部屋でベッドに腰掛け、濡れた頬もそのままに、色を濃くしたシャツの裾を握り締める。
力の入った指先は白く冷たい。
眼球は静かに熱く燃えている。
怒りも哀しみも、後悔も自責の念も、行き場を失ったこの愛も。
ぜんぶ全部、涙に溶けて私の外へ出て行ってはくれないか。
ざあざあと遠慮もなく町に降る雨のように、全てを流し去ってはくれないか。
引き攣る呼吸の合間に、長く、重く、腹に溜まった息を吐く。
一緒に漏れ出た震える声が、嗚呼、もうどうしようもなく情けない声が、目頭をきゅうと締め付けた。
この感情を涙に変えられたとして、一体何が変わるというのだろう。
いや、そんなことは分かっているのだ。
何も変わらなくとも、今はただ。
それからどれ程の時間が経っただろうか。
纏まりのつかない考えがごちゃごちゃと頭の中で絡まっている。
熱い。寒い。同時に眠気が襲ってくる。
なんだかもう霞がかったような思考の中、まるで泣き疲れて眠る赤子のようだと、ふと思う。
少しだけ、おかしくなって力が抜けた。
そうして涙も乾くころ、大きく息を吸い込んで、私はひとつ小さな咳をした。
『透明な涙』
1/16/2025, 11:18:58 AM