演奏者くんのことを閉じ込めてしまいたい。
彼が傷つくことがないように。
誰かに汚されることがないように。
でも、それは到底無理な話なのだ。
ボクはそもそもそんなことを出来るほど彼より強いわけでも、偉い人から彼を隠し通せるわけでもない。
それでも少しだけもしかしたらを期待して、いつの間にか鳥かごを作ってしまっていた。人間が入るレベルの鳥かごを。
で、見られた。
「………………なんだい、これ」
引いてる、というより困惑しているような顔で問いかけられた。
「ん〜、鳥かごかな」
「それはそうだろうね。外からは鍵がかけられるけど…………中からはダメそうだね」
演奏者くんは若干怪訝そうな顔をしながらあらかた見たあと言った。
「………………ちょっと入ってみてくれないかい?」
「いいよ〜」
頷いて中に入る。格子状とはいえ、少しだけ圧迫感があって閉じ込められてる感があるな、と思った時、演奏者くんがカチャンと鍵を閉めた。
「………………え?」
「きみが僕のことを理解してなくて助かった」
そう言った彼の顔は薄く微笑んでいた。
「僕はきみのことが好きだからね、どこにも行かないように閉じ込めておきたかった」
歪んだ笑みを向けられて、ボクは閉じ込められてしまって、偉い人に見つかったら大変なことになる、まさに危機的状況だってのに、ボクは演奏者くんが同じ思考を持っていたという事実に、気持ちが舞い上がってしまっていた。
7/25/2024, 12:53:38 PM