「おやすみ」
1人っきりの部屋で自分の声だけが闇の中に溶けていく。
隣にいることが当たり前だったから、習慣になってしまった言葉たちは今や虚しいだけだ。
おはよう
いってらっしゃい
ただいま
そして、眠りにつく前のこの言葉。
幾夜過ごせばいわずに眠れるようになるんだろう。
あと幾夜でこのひとりぽっちに慣れるんだろう。
そう思案したところで答えは出ないし
そう思案しているうちはあの人を忘れることなんて出来ないのだ。
「……おやすみ」
今度は1人を噛み締めるように呟いた言葉が、また1つ闇に溶けて消えた。
11/3/2023, 9:24:41 AM