作品14 セーター
今日もまた、悪夢を見た。忘れたいけど忘れることは許されない、あの日の出来事。永遠に、僕の心を呪い続ける、あの日の出来事。
息が苦しい。あの夢を見た日はいつもこうなる。
汗びっしょりで、息がしづらくて、頭はぼんやりしてるのにあのことしか考えられなくて。
胸が締め付けられるような感じがして、顔がグチャグチャになるくらい涙が止まらなくて、苦しい。
苦しい苦しい。助けてとうさん。
必死に呼吸しながら、フラフラした足取りでタンスに向かう。上から三段目の引き出しを開ける。中には、父さんのセーターがひとつだけおいてあるから。
それを取り出してギュッとする。そしていつもみたいに、必死に呼吸を整える。あの夢を見たらこうして、心を落ち着けさせなさい。そうやって、先生と母さんに教えてもらった。
呼吸が整ってきたら、鼻から思いっきり息を吸う。セーターから少しだけタバコの匂いがした。
懐かしい父さんの匂い。
あの日、あの事故で、僕を庇ったせいで亡くなった、父さんの匂い。
これは僕に遺された、たった一つの形見。
ごめんなさい。ごめんなさい。
僕が殺したも同然なのに。なのに、いつも助けを求めてしまって。
僕じゃなくてごめんなさい。
しばらく経ってやっと落ち着いてきた。セーターをみると、涙で少し濡れてしまった。
それを抱きしめながら、また呟く。ごめんなさいと。
タバコの匂いがまた鼻をついた。
⸺⸺⸺
てすとがちかいです。
セーターは幼少期に数回しか来たことありません。肌弱くてチクチクしたので痛くなるから。
知人達曰く暖かくていいらしいけど。
11/24/2024, 2:04:34 PM