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ずっと言えなかったことがあって……

実は……

私……

林檎よりも梨が好きなんです

『梨』

「梨!?」

驚いて、僕は目の前の彼女を凝視する
だって、君は言っていたじゃないか
『実家がリンゴ農家』だって
そのことを確認すれば、それは本当だと言う
なら、なぜ…?

「林檎も嫌いじゃないんです、でも……梨のほうが水っぽくてシャリシャリしてるのが好きで……黙っててごめんなさい!」

別に怒ってはいないけれど、なんだろう……
林檎を使ったスイーツに始まり、林檎柄の雑貨、林檎モチーフのアクセサリー……

今まで良かれと思ってしてきた行動の数々を思い返すと、恥ずかしくなってくる
どれもこれも、僕の独り善がりだったのだろうか

「でも! 柄とかデザインとしては林檎のほうが好きなんです!」

肩を落とす僕に、彼女が慌てて声をあげる
「ほら!」と見せてくれた指先には、赤くて可愛らしい、小さな林檎柄のネイル

「最初はそうでもなかったんだけど、たくさんプレゼントをくれたでしょう? そしたら、林檎を眺めると貴方の顔が思い浮かんでくるようになって……」

尻すぼみになる声に、おや?と首をひねる
僕のの顔が浮かんで迷惑だと言われるのかと思いきや、そうではないらしい

「それで……こうして身につけてると、いつでも一緒にいるような気がして……嬉しくなっちゃって……だから、ね……?」

そう語る彼女の顔は、林檎のように真っ赤に染まっていた

10/14/2025, 4:21:23 PM