、と彼は言った。
それは諦めの声か、嘆きか、それとも感嘆か。
答えを求めるように、私はそっと彼の横顔を盗み見る。
「……なんでもない」
そう言って彼は微笑んだ。
けれど、その手のひらには、くしゃくしゃになったチケットの半券が握られていた。
それが映画のものか、遊園地のものか、あるいは旅の切符か——私にはわからなかった。
ただ、ひとつだけ確かだったのは。
彼の「嗚呼」には、たくさんの想いが詰まっているということ。
─────────題.嗚呼────────
3/9/2025, 10:06:15 AM