かたいなか

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「ひとまず1件メッセージが来れば良いんだな」
これは汎用性高いお題じゃないか?某所在住物書きは喜々として、早速物語を組み始めた。
「初めて送った文章。仕事系通知。『電話番号登録してたけど君誰だっけ』の確認、『チケットご用意できました/できませんでした』の当落告知、怪しいグループからの招待あるいは指示通知。等々」
1件挟めばお題クリアだもんな。簡単よな。物書きはひとつ、実際に受け取ったことのある1件の詐欺メッセージの話を組み始める。
「……簡単なハズなのにムズい」
特に面白い展開にはならず、結局挫折した。

――――――

昨日申請したリモートワークが通った。
私の職場はグレーに限りなく近いブラック。
ノルマとか根性論とか、無能なジジババが勤続年数で上に行く年功序列とか、過去の負の遺物を詰め込んだ給料良いだけの職場だけど、
それゆえに、コロナの第二波三波で早々に酷い職場内クラスターを出してた。
おかげで早くからリモート体制が整って、申請も通りやすくなったわけだ。
アツモノ懲りてナマス吹く、とかいうやつだと思う。

総務課で事務方やってる有能なジジ、寺武方さんが言うには、リモートは、仕事効率上がるひととバチクソ下がるひとで二極化してるフシがあるらしい。

で、その仕事効率を更に上げるため、それから今週の電気代を節約するため、
5対5想定の電気代と、まかない代を茶封筒に入れて、エアコンシェアのため職場の先輩のアパートに向かってる途中。
『おはよう 昼メシのリクエストは何かあるか?』
スマホのグルチャに、1件メッセが届いた。
『肉→豚モモブロック
野菜→ネギ 生姜 ナス ピーマン
 他→備蓄白がゆ 低糖質パスタ 糸こん 等』
ピロン。返信編集してる間に、もう1件。
1人分作るのも2人分作るのもさして変わらないからって、先輩は低糖質低塩分の、ヘルシーまかないとスイーツを出してくれる。

なんでこれで独身なんだろう。
なんでこれで恋人いないんだろう。
すべては先輩の初恋相手が、先輩の心をズッタズタのボロッボロに壊して、先輩を人間嫌いの寂しがり屋にしちゃったせいです(先輩の友人談)
本当に、なんてことをしてくれたのでしょう。

『備蓄白がゆ is 何』
こっちはご飯たかりに行く身分なので、先輩が作ってくれるものなら何でも食べます。
て返信しようと思ったけど、白がゆってのが気になる。部屋に炊飯器が無い、かつ低糖質志向な先輩だから、てっきり、白米食べない系だと思ってた。

『防災の非常食として備蓄していたものだ。普通の白がゆだよ。ただ、賞味期限が来月でな』
『おいしくなる?』
『アレンジは可能だ。スープの素を入れて温めれば、短時間でおじやだか雑炊だかになるし、トマト煮のレトルトと卵をぶち込めばオムライス風が食える』
『白がゆ意外としっかり非常食』

『で、昼のご希望は』
ピロン。再度メッセが来る。冷雑炊食べたい系の返信して、スマホをバッグに戻して、私は先輩の部屋への道を急いだ。
しっかりエアコンの効いた、防音防振の先輩の部屋でガッツリリモートワークして、
お昼は、豚バラの冷しゃぶと生姜少々と、フリーズドライの卵スープを利用した、冷雑炊になった。

7/11/2023, 11:12:05 AM