とらた とらお

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心を込めた花束を
貰ったことがない私は
あまり花束を好きになれずにいる

贈ることが形式化され
気持ちのない花束を贈り贈られ
何のために贈っているのか
正直よく分からなくなる

鼻がよく効く私には
花の匂いは強すぎて
残念ながらいい匂いとは感じられない

花束を贈るからと頼まれて
立ち寄った花屋さん
強烈な匂いが充満していて
少しでも早く逃げ出したくなる

形式化して
気持ちのこもらない花束を渡すくらいなら
渡さなければいいのに

そんなこと言えるわけもなく
形式的に渡して
形式的に貰う
花と花屋さんに失礼だ…。

花束が嫌いな私も
ふと思うことがある
愛するあの人からもらう花束は
それはそれはとても、嬉しいだろうなと

その人はたまに
山椒の枝葉をくれる
山で見かけるとわざわざ採って寄越してくれる

私は知っている
その人が山椒の葉の匂いがとても嫌いなことを

その嫌いな匂いが手についても
わざわざ見かけると採って渡してくれることを

初めて受け取ったとき
目を輝かして喜んで以来
私が嬉しそうに匂いをかいでいるのを見て以来
その人は渡してくれる
渡したあと、こっそり「くせっ…」といいながら

渡されるたび小さく喜ぶ
私の姿を微笑ましげに見ながら

そんな人から貰える花束
いろんな想いをはらんだ花束
貰って嬉しくないわけが
なかろうもん

2/9/2023, 2:56:53 PM