真澄ねむ

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 新年の祝いを終えた翌日のことだ。ニェナはルヴィリアと共に、屋敷のバルコニーでアフタヌーンティーを楽しんでいた。
「昨日はありがとう、ルヴィリア」ニェナは紅茶を一口啜ると続けた。「おかげさまでとてもいい一日だったよ」
 同じように紅茶を一口啜ったルヴィリアは、微笑みを浮かべた。
「どういたしまして。こちらこそ、楽しい一時を過ごさせてもらったよ」
「ハーウェルも来たらよかったのにね」
「一応、呼びはしたんだがな。何を遠慮しているんだか……」
 そう言いながらルヴィリアは肩を竦めた。くすくすとニェナは鈴のような笑い声を上げた。
「照れちゃったんじゃない?」
「照れる? 何に?」
 訝しげに眉間に皺を寄せたルヴィリアに、ニェナはにっこりと笑って続けた。
「綺麗に着飾ったルヴィリアにだよ」
 平素の貴族のお嬢様らしかぬ格好を見慣れていると、あまりそういうことを意識しないが、節目節目の式典などで着飾ったルヴィリアを見ると、彼女もまた整った顔立ちの美人なのだということを改めて認識させられるというものだ。ハーウェルは見た目よりずっと純情なため、そんな美人を目の前にすると上手く喋ることができなくなってしまう。
「はあ?」
 ルヴィリアはきょとんとしたように瞬きしたが、すぐに呆れたように肩を竦めると、話題を変えた。
「それはともかく、年が明けたわけだが……ニェナ、何か新年の抱負みたいなものはあるのか?」
「そうだなあ……あともう数年もしないうちに、本格的な修行が始まるだろうから、それまでに何か冒険みたいなことしてみたいなあ」
「冒険、か……。私もしてみたいものだ」
「ルヴィリアも一緒にしようよ! 二人でならきっと楽しいよ」
「そうだな。どうせなら、ハーウェルも一緒に連れて行こう。今でも一攫千金を夢見ているようだからな」
「一攫千金を夢見るより、普通に働いた方が楽だと思うけどなあ」
 苦笑しながらもニェナは三人で未知の場所を冒険する様を思い浮かべて、うっとりした。

1/2/2025, 1:28:47 PM