可哀想なことであるけれど、君はここにいてはいけないよ。
足が痛いのは知っているさ。休めたいこともね。それでも君はここにいてはいけないよ。
こんな暗闇をひとりぼっちで歩くのはほんとうに辛いと知っているけれど、君はここにいてはいけないんだよ。
そう、歩くのを辞めた僕が言うのだから間違いないよ。
君はたった一人で、いくら体がいたんでも目が見えなくとも耳が聞こえなくとも歩き続けなきゃいけないんだ。
そうして、きっともうすぐ、もしかしたら瞬きのうちかもしれない。もしかしたら10年後かもしれない。
いつか現れる出口の鍵を見落とさないようにするんだ。
あぁ、わかっているよ。こんな暗闇でひとつばかりの小さな鍵を見つけるのは至難の業だってことくらい。
それでも君は見つけなければいけない。
鍵を探すことを諦めてしまったら、歩くのを辞めてしまったら、もう二度と歩いてる人間にはなれないのだよ。
そうしたら初めて気が付くんだ。
歩けていた幸せに。
失ってから気がつくのは惨めでたまらないんだ。
ほんとうに、そう思うんだよ。
それでも気力が持たないって?
それじゃあいいことを教えてやるよ。
実は、鍵を見つけられた人間はほとんど居ないらしい。
しかしまぁ、鍵を見つけて、こんな暗闇を抜けた先は眩い光が待っているそうだよ。
それはそれは美しいんだと。
そんな光を丸ごと自分のものにできるらしいよ。
、、、きっと歩いてるうちに少しは暗闇に目が慣れて歩きやすくなるさ。
さ、そろそろ行きな。
がんばれ。
11/30/2025, 12:32:55 PM