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「私、けっこう梅雨の時期好きなんだよね」

帰り道、突然切り出された話。

どうして?と形式的に聞き返すと、彼女は花壇の方向を指差した。

「ほら、あれ」

そこには、青が強めの紫色のあじさいが咲いていた。

「私あじさいが好きなんだ~」

脈絡のない語調で彼女は言い、そのあじさいの前にしゃがみこんだ。自分も座らされる。
そして、また勝手に話し始める。

「あじさいって、土のペーハーによって色が決まるんだって。ん?ペーハー、って言い方はもう古いか、ははっ。…このあじさいは青だから、土は酸性か。よかったよかった、私この色好きなんだよねぇ」

あじさいの花びら(正式には「ガク」だとのちほど聞かされた)をつまみ、軽く引っ張り、撫で、弾き、彼女はつらつらと聞いてもいないことを語り続ける。

そろそろあじさい講座にも飽きてきて、帰ろうかと立ち上がった時、

「ね、綺麗でしょ~」

そういって笑いかけてきた彼女。


その笑顔が、あじさいが霞んでしまうほど綺麗に見えて、不覚にも、この空気を読まない少女にときめいてしまった。





【あじさい】

6/13/2024, 2:54:32 PM