吉野うしお

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 初めて買ったメイク道具の包装。

 それは特段可愛らしいわけでも限定品だったわけでもない。いつでも買える、いわば「安物」だ。高いものに比べれば秀でた特徴もない、本当にそれだけの包み。

 けれどもそれは、私が踏み出した一歩を確かに象徴する、ただひとつのもの。他に替えの利くことなどない、そこにしか存在しないもの。

 でもたぶん、いつか手放してしまう時が来るのではないか、とも思う。きっとその時は、数えきれないほどに私が歩みを進めた時なのではなかろうか、と、その包装を眺めながら、ふと思うのだ。

8/18/2022, 8:22:31 AM