レンズを睨むように、鋭い眼差しを向けてと指示が入った。
俺は従い、眼に力を込める。いつもは柔和で知的だと褒められる表情をぐっと引き締め、まるで蹴落としたい相手でもいるように、レンズを敵だと捉えるように、強い視線を送る。
その上でポージングを決め、いくつかフラッシュがたかれ、OKと明るい声がかかるまで意識を集中させた。
「良いね。すごくかっこいいよ。いつもの優しい君とはまったく違う、新しい一面を引き出せた」
カメラマンはとても満足した顔で俺を褒めてくれた。ニコッと笑みを浮かべて、頭を下げる。
「ありがとうございます」
その後も撮影は続き、いつもの爽やか然としたスマイル、切なげな横顔という風にコンセプトを決めて被写体に徹し、スケジュールは少し早めに切り上がった。
インタビューに入る。雑誌記者が登場し、これまでの活躍と、これからの仕事を答えた。
「スターになる人だと思います」
記者は好意に満ちた視線を送ってくれた。お世辞ではなく、俺に期待してくれているのだとわかる、熱い視線だった。
俺は礼を言い、現場スタッフ全員に丁寧な挨拶をして仕事を終えた。
スターになる人。当たり前じゃないか。
俺は、ずっとその道を目指して生きているのだから。
憧れは、憧れのままでは終われない。胸の内に灯る炎をうまく操りながら、俺はスターダムの階段を上っていくのだ。
鋭い眼差しは、俺の本質。この世界で生き残ってやるという、飽くなき野心。
幼い頃に夢見たあの場所に、今、立っている。
#鋭い眼差し
10/16/2023, 3:38:31 AM