「生きる意味……ですか。」
カウンセリング中にそんな質問をするとは。愚問なんじゃないか。
「そんなのないんじゃないですか?人には価値観の違いがある。誰かにとって価値のある人間しか必要がないんです。親もいない、頼れる親族もいない、いるのは面白がって精神科を進めるクソほど役に立たない教師。そんな僕に何かしらの必要性、利用価値、そんなものが到底あるとは思えないです。こんな奴がいた所で生産性が下がるだけでしょう?楽しいこともなければ人を楽しい気持ちにさせることもない。なんにしても意味が無いんです。」
そう。生きているだけで偉いだなんて絵空事だ。社会に洗脳された人間の戯言でしかない。命の重みは人それぞれ違うし、そうでなければ不公平だろうとおもう。当たり前じゃないか。人に楽しいや嬉しい、幸福を提供出来る人間は価値があって当然だ。逆に妬んだり恨まれたり、負の感情を人に植え付ける人間に価値があってたまるものか。普段善いことをしている人が1回悪いことをしたらそこだけを責めるくせして悪い人が1回善いことをしたらそれだけで褒められるんだもんな。そりゃあいい人が早く死ぬだろうよ。正当性が無いんだから。神も怒るさ。
先生が口を開く
「俺もそう思う」
「え?」
「俺も生きる理由なんてないと思う」
なんだよ先生。模範解答はないのか?あんたみたいな人を救う仕事をしている大人が僕なんかの言葉に賛同したらダメじゃないか。それらしい理由を押し付けてくれないと本当に意味なんてないことになってしまう。
「その人のままでいて、それだけで価値があるって考えは俺も間違っていると思う。それだと努力した人が報われないからね。存在価値という価値単位はやっぱり他人からの評価が大きいと思うんだ。…そんな考え方をしている君は随分色々あったんじゃないか?俺に君の過去は分からないけど、今目の前にいる君が君であることを知っている。これからを君がどう選択していくのか、俺が見守ってる…のじゃだめか?君の意見を聞くのは面白い。カウンセラー向いてるんじゃないか?」
先生がこっちを見て微笑んできた。
よく大人がやってくる可哀想な子を見る目で。
「……ありがとうございました」
「ん。また明日な!」
昼下がりの、いつもより少し涼しい風に吹かれながら僕はこれからの終わりを選択した。
4/27/2024, 3:54:19 PM