時を告げる
…そろそろ時間だ。
先月受験した高校の合格発表が始まる。
目の前に広がる大きな紙
そして今私の手の中で小刻みに震えている小さな紙
…でも、すぐに見ることなんてできなかった。
自分の番号がそこにあると思わなかったからだ。
この高校を受けた人はみんな私より何倍も賢そうに
見えた。
中には同じ中学校で、学年トップだった人もいた。
…私はこんなハイレベルな高校になんて入りたく
なかった。
もっとのほほんとしていて青春を謳歌できるような
ところがよかった。
…でも、それでも私はここを選んだ。
だって…
小学生のときからずっと想い続けている人がいるからだ
…彼は
明るくて
誰にでも優しくて…
そんなところに私は惹かれたのだ。
…今日は彼と結果を見ようと思っていた。
だけど、そこに彼の姿はなかった。
……あれ?
なぜが涙が出てきた。
……。
その時誰かに肩を叩かれた。
「何泣いてんのさ」
それは優しい彼の声だった。
「よく見てみろよ。ちゃんとあるじゃん!」
彼が指を指した先に目を向けると
ちゃんと「2525」の数字があった。
「…数字…ちゃんとある。」
「…やった…!!」
「おめでと!! あ、もちろんちゃんと俺も受かったし」
まだ、彼と一緒にいられるんだ…
「ほら、とりあえず涙拭けって 2525 ニコニコだよ!」
「…なにそれ笑」
お互いに笑い合いながら、まだ雪の残る道を歩いた。
高校の近くにある古い時計台が
気づけば正午を告げていた。
9/6/2023, 1:59:16 PM