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【部屋の片隅で】


部屋の隅においたランプひとつで事足りるような
そんな時期を過ごしていた
テレビは床に直置きだったし、
暖房はちいさなストーブだけで、
シャワーは劣化でヘッドが取れていたし、
冷蔵庫は空っぽだった
牛乳と食パン、プルーン、チーズ…

今でいうとどんな感じに形容されるのだろう
不健康で、不摂生で、怠惰で、怠慢で
今みたいに、料理や家事を楽しんでできる、
そういう世の中じゃなかったから
21時までくたくたで仕事して、服の話や仕事の話、
新商品の話題、社内恋愛の話、…
店の同僚たちと駅の階段前でビール飲んで
電車で降りる駅をまちがえたり…
そんな毎日だったなぁ
だけど、楽しかったよ
床に寝転がってそのまま寝てしまったり、
先輩からかかってきた電話にタメ口で出たり、
家にいるのは自分だけという毎日が当たり前だったから、
いろんなものにひとりで立ち向かったし、
スマホはなかったから時間もあったし
自由で、束縛されず、休みの日は寝転んで…
孤独とのつきあいかたみたいなのも知った
でも画材屋さんが近くにないのは寂しかったな
ひとりぼっち、なんて考えなかった
みんなそうだったから、たくさん話したし
話さないこともたくさんあった
整った部屋をつくることができなかった
どこだって仮住まい、いつでも動けるように
それが二十代の真ん中くらい

12/7/2024, 12:56:03 PM