秋恋
文化祭1日目当日。高校へ向かう電車に乗りながら、想い人に送ったLINEを見返した。
「明日の文化祭一緒にまわらない?」
「いいよ」
短く返された承諾の返事に狂喜乱舞した昨日の夜がまざまざと思い出される。
友達に促されるがまま送って後悔したけれど、消さなくて本当によかった――――
「おはよ。」
「おはよー」
「どこ回る?」
「決めてない」
「じゃあお腹すいたから、あいつのクラス行こうよ、シャカシャカポテト」
「いいね」
校則で禁止されているメイクを解放して、バッチリ決めてる彼女は滅茶苦茶かわいい。
”あいつ”という、自分以外の異性の登場に少しの嫉妬を覚えつつ、恋心がバレないように平常心を保って接する。
――告白しなよ。
という友達の声が聞こえた気がしたが、そんなの無視だ。俺に勝算が無いのはとっくの昔に知っている。
忘れもしない。今年の新学期。空は晴れわたり、桜は咲き乱れ、太陽は暖かく光っていた。高校二年生という、最後の青春を謳歌する時期。好きな人とまた同じクラスになれたことも相まって俺は有頂天だった。
そんな気分が崩れ去ったのは俺がクラスに入った時だ――
「そういえば、あのイケメンと文化祭回んなくてよかったの?」
「あのイケメン?」
「何かと親しげに話してるアイツだよ」
そう、新クラスで仲良さげに話していた、うちの学年でも割と上位にはいるあのイケメン!!
「あーただの幼馴染だよ」
「付き合ってんの?」
「は?」
俺たちの朝ごはんであるシャカシャカポテトは奥の方にあるらしい。だんだん人気が無くなってきた。
教室の希望が3年生と被りに被ったのだろうか、いいものを作っても場所が悪ければ客足は伸びない。
ちょっとだけ同情する。1番高いシャカシャカポテトを買ってやろう。
「ある訳ないでしょ、あれは顔面偏差値が良いだけの、ただの馬鹿だから。私他に好きな人いるし。」
「へぇー。…………え、好きな人いんの?!」
「うん。いたらおかしい?」
「いや?で、誰?」
「…………今隣にいる人。」
いつもクールで表情を崩さない彼女の顔が、真っ赤だ。今日はそんなに暑くないのに。西日も刺してない。秋の空は春に見た空よりもはっきりしていた。
「…………俺から言いたかった。」
「言うのが遅い、ヘタレ。」
「だって……いや、ごめん……。
……好きです。去年から、こんなヘタレでも良ければ付き合ってくれますか。」
「もちろん。」
10/9/2025, 5:03:47 PM