三月うさぎ

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さよならを言う前に


さよならを告げる前は、これでやっと楽になるのだと、そう思っていた。

心が軽くなって、きっとずっと息をするのが楽になる。

そう信じて、願って、ただこの決意が揺らぐことだけが恐ろしくて。

追い立てられるように、受話器越しに別れを告げた。
後悔しないように、今まで辛かったことを並べ立てて、決して心変わりなどありえないと。

そうしてあっさり別れは成って、私は開放感に満たされ。
一瞬後、怖ろしい喪失感でいっぱいになった。

何かを間違えた気がしてならなかった。

震える手で、どうしても消せなかった番号をタップして。

『何故』

訝しげな声に、既に他人になった人の声に。
私はようやく自分が望んだものの正体を理解して、泣いた。

そして今度こそ彼の番号を消した。

8/20/2024, 11:18:19 AM