烏兎

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お題:遠くの空へ
 ぽーんと、ボールが跳ねた。受け止めそこねたボールは高い孤を描いて、落ちた。
 紙飛行機は風に乗って、けれど公園から出る間もなく墜落する。
 ブランコをどれだけ高く漕いだって、近づく空が遠いことを知るだけだ。
 枝の上で羽を休めていた雀が飛んだ。
 ブランコを漕ぐのをやめる。
 紙飛行機は女性に拾われた。彼女は顔を上げ、送り主に笑いかけた。
 ボールは、きゃらきゃらと笑う子どもたちが捕まえた。
 僕はブランコから立ち上がって歩き出す。今はまだいいや、そう思えた。遠くの空へ行けずとも、今はまだ。

4/12/2024, 11:08:38 AM