毎日のことを記したくて日記を書こうと思った。
だけど今日、という日を表す術がなかった。
下界には『日付』という概念があって、一から十二までの『月』と一から三十そこらまでの『日』、七種類の曜日が存在する。さらに『年』という概念もあって、それらで『今日』という日を断定するらしい。
だけれども、この世界にも天界にも『日付』という概念はない。そもそも永久に続き、永久に不変な日常を生み出す世界に必要ないと言われればそれまでだけど。
それでも日記が書きたかったから仕方なく、今日を適当に思いついた数字で『四月二十三日』とした。
そうして日記を書き始める。
今日はどんなことがあったとか、今日はどんな風に思ったかとかを事細かく。
彼女に会えなかった。
会えない、ということが今までになかったわけではないけれど、彼女のことが好きだと気づいてから会えなかったことは今日が初めてだった。
心にぽっかり穴が空いたようだった。
あまり刺激、というものが少ない場所であるこの世界はいつもわりと退屈ではあったが、今日はその退屈さがとても大きな物に感じられた。
眠気を感じるまでに、ルーティンを終えるまでに、とても長い時間がかかったような気がした。
朝も昼も夜もないだから、時間だけは存在させた。時計を持ち込んでその時間で眠りにつく時間や起きる時間を決めた。
その時間がとてつもなく長く感じられた。
彼女がいることが当たり前だと思っている、そんな自分に少し驚いてしまった。
4/23/2024, 2:48:22 PM