名無しの夜

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傷つきたくないから、心を空にする。

そんな癖を、いつから身につけたのだっけ。


陰口も、上辺だけの賞賛も、どうでもいい。

聞こえないフリ、聞いていないフリ。


傷ついても——何でもないフリをしていたら。


いつしか、誰の言葉も心底に届かなくなってしまった。


でもいいの。

ひとりが気楽、ひとりが良いから。



「にゃー」

リビングの窓辺に座っていたら。
老猫が隣に、寄り添ってきた。


冷えた手に、やわらかな肉球の感触。

キラキラのおめめ。
優しい暖かさ。


……何でもないフリなんて、できないね。


大好きは、確かにここにあるんだ。

12/11/2023, 10:14:20 PM