いつからだろう。「魔法」という存在を信じなくなったのは。
いつからだろう。妄想の世界を「ありえない」と否定し始めたのは。
いつからだろう。そんな自分がつまらないと感じているのは。
今、そんな考えがどうでもよくなっている。
なぜ、「魔法」を信じない俺の前に魔女がいるのだろうか。そもそも、この世に魔女などという現実離れした存在がいるのか。心の中であれこれ言っているが、口に出す勇気は残念ながら俺にはない。
よし。逃げよう。踵を返してそそくさとその場を去ろうと思った。が、その魔女らしき女がそれを許してくれない。
「逃げないで。怪しいモンじゃないから。」
いや、それがかえって怪しいんだよ。
「あの、ご用件は…」
ここは素直に会話しよう。
「あのさ、キミさ、魔法とか信じてるタイプ?」
「は?」
なんだよその質問。初対面の人にする質問じゃないだろ。まずは名前とかだろ。いや、聞かれても答えないけどさ。
「私さ、魔女なんだよね。」
あ、自分から言うタイプの人ですか。
「あと、1つ思うんだけどさ、キミ、心の中でめっちゃ話すのに、声には出さないんだね。もしかして、学校とかでは陰キャ?」
え、バレてた、の、か。心の声聞こえる系の魔女、か?
「あのさ、言いにくいんだけど、フツーに会話してくんない?私かて、魔女とはいえ、キミとは似てんじゃん。」
どこが似てんだよ。言いかけた言葉を飲み込んで、
「はい。なんか、すいません。えと、俺は、高校1年の、相田葉魔です。」
と、名乗ってしまった。不審者かもしれない自称魔女に。でも不思議と自称魔女といると安心するのは、気のせいなのか?
「アイダ、ヨウマ、クンね。ヨウマクンと呼ばせてもらうわ。そういえばまだ名前は教えてなかったね。私はヨウキ。」
ようき…陽気。なんか、繋がった。
「あの、あなたの目的はなんなんですか。こんなに長々と話しているのに、一向に目的が見えてこないんですけど…。」
もう、疲れた。さっさと終わらせてくれ。
「あはは、そうだね。ヨウマクン。私に、魔法を教えてくれないかな。」
…⁈
もしかしたら、もう一度あの時みたいに、何も考えず、純粋な心で過ごせる日が来るのかもしれない。
↓作者から
長くなったこのお話を最後まで読んで下さりありがとうございます。次からのお話も楽しみにしていてくださいね!(次はもっと短いお話にするつもりデス…)
「魔法」
2/24/2025, 6:10:27 AM