「良い名前だね」
そう言われる度、私は作り笑いで微笑んだ。
大層な意味合いを込めた、しかし私の世代にしては古臭い名前。
名前は親から一番に渡される贈り物だと言う。そうだと言うなら、私のこれは、親からの重すぎる期待を形にしたものに相違なかった。
何度か改名要項を見るとも無しに調べたことがある。珍しすぎるわけでも日常生活に不便があるわけでもない「これ」は変えることへの労苦と天秤にかけられ、そしてすこんと飛んでいってしまった。ついでに言うのなら、私はそれほどこれが嫌いではなかった。
そう、綴りや響きだけを客観的に見るのなら、決してけなすほど悪くは無いのだ。点数でいうのなら10点満点中7点くらい。
⋯⋯本当に捨てたいのは。変えたいものは。
その思いすら、幼い頃のほんの少しの優しい記憶に阻まれてしまって。どうしようもない自分に、また曖昧に微笑んだ。
8/17/2023, 5:07:37 PM