風呂上がり。軽くタオルドライした髪にヘアオイルをつける。濡れてるところにオイルをつけた今は、髪も落ち着いてくれているが、朝起きればまた…。日々のこととはいえ面倒に感じる日もあり、鏡を見ながらため息をつく。
「俺もヘアオイルが必要になるような毛量が欲しい」
いつの間に背後にきていたのか。背中から腹に腕を巻きつけ抱きつきながらそんなことを言うこの男。
本人は薄毛になるのではと恐怖に慄いているようだが、猫っ毛なだけで。触ると見た目通りふわふわしていて、手触りもいいし可愛い。寝癖がついてもすぐに直るのは羨ましさしかない。
真剣な表情で言うから笑ってはいけないと思いつつ。
「ヘアオイル使わんくても全然まとまるんやし、ええやん」
「んーーでもなんかヘアオイル使てる方がデキる男って感じせえへん?」
ナニソレかわいい。
今度は我慢できず吹き出してしまった。
「こちとら真剣なんやぞ!絶対ハゲたない!」
「大丈夫やて。髪やわこくて細いだけやん。ちゃんと手入れしとるし平気やろ」
俺からすると扱いやすい髪の毛で羨ましいけどな。
これがないものねだりなんかな。
ハゲるか大丈夫か、20年後が楽しみやな。
そう言ったらスパーンと尻を叩かれた。
【お題:ないものねだり】
3/26/2024, 11:25:40 AM