TAO /fiction

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「これはねぇ、ここがお花じゃないんだよ」
母はいつも、あじさいを見かけるたびに言ってた。
あじさいの花にみえるところは、ガクというところで、本当の花は別にあるのだ。

私は本当の自分を隠して生きている。
あじさいみたいだなと思う。
母にも誰にも言えない、見せられない。

「お母さん、いつもお母さんが見ていた私は、本当の私じゃなかったんだよ、ごめんね」

母の遺影の横にあじさいを飾りながら私は言う。

明日は母の十三回忌だ。

6/13/2024, 12:22:41 PM