西の護符屋

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 神様が俺の枕元に舞い降りた時、どうしてそれが神様だと俺はわかったのだろう。人魂のようにかすかに発光し、ふよふよと浮いているそれは、どこにあるかわからない口でこう言った。

「何故死なぬ?」

 俺は今死刑宣告を受けているのだろうか。酷い悪夢だ。

「寿命が…まだだと考えていたのですが、違うのでしょうか。」

 掠れながらも返答できた俺は偉いと思う。

「お前だけではない。人間は増えすぎた。」

 そう言って神は去っていった。特に俺が神に選ばれたわけでもなく、たまたま俺がそこにいただけの話なのかもしれない。

 数々の病、気候変動による食べ物の増減、偏在。それらに対抗すべく人生をかけている全ての人が、あの神様に見つかりませんように!あの神様に良いことが起きて、思い通りに減ってくれぬ人間のことなど忘れてくださいますように!
 そんなことを祈りながら俺は解熱剤を服用してもう一度眠りについた。

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 神様は、人間の願いを叶えるための存在ではなく、時にただおそれるべき存在であったろうなとも思うのです。一日に100種が絶滅するという現代において、人間の味方だけではない神様にとっては特に。

 ところで、舞い降りるって改めて考えると不思議な表現ですよね。能の舞を知っている日本人からすると舞い降りるの表現が布や髪や羽なんかが、たなびいたりして神秘的に美しいくらいで済むけれど、外国の方がこの言葉を見たら、神様ダンスすんの?とイメージに悩まれるんではないかな。ブレイクダンスしながら現れる神様を想像してひとしきり夜中にニヤニヤしてしまいました。

7/27/2024, 11:55:12 PM