俺の恋人は可愛い人です。
彼女の眉が八の字になって俺を見上げられると、どうしても負けてしまうんだ。
時にはとめなきゃいけない時もあるんだけれど、惚れた弱みと言いますか、無理なんです。
表情や仕草に幼さと無垢さを残す彼女なだけに、あんな曇りなき眼で見られたら断るなんてできないんだよ。
「可愛いのズルい!!」
一度、彼女にそう言ったことがある。
すると彼女は少し考えてから、ふわっと微笑んでくれた。
「それなら、あなたもズルいですよ?」
俺は何を言っているか分からない。
俺の表情を読み取ったのか、俺の頬に手を乗せてから口を開いた。
「私から見たら、あなたが可愛くてズルいです」
少しだけ困った笑顔で俺を見つめる。俺が心の底から弱い、愛しい彼女の表情。その視線は俺を捉えていて、これは彼女の思いも俺と同じ……なのかな?
そう気がつくと、なんだが勝ち負けなんてどうでもいいやって気持ちになった。
おわり
三八〇、勝ち負けなんて
5/31/2025, 12:48:11 PM