uni

Open App

当直中のほんの束の間、職員入り口外の囲われた喫煙スペースに向かう。

今日はまだ、救急の患者は少なく余裕がある方で、深夜の薄ら冷たい夜の空気と一緒に煙草を吸う事ができた。

深く濃い夜とたった一つの街灯。夏らしい青い匂いが花壇より漂う。喫煙スペースのベンチに座り、夜を仰ぐ。

病院の周りを囲う街路樹の向こう側では、夜の街の灯りが点滅するように光り、此処に囚われているような、好き好んで此処にいるような不思議な感覚に襲われる。

短くなった煙草を挟む自分の手を見る。

人の命が絶えずやってきて、この手で救ったり、もちろん救えなかったり。

医師という仕事には誇りを持っている。

けれど、此処は命を少し支える通過点でしかなく、自分の力など微力に過ぎない。


煙草の煙と共に思いに耽っていると、青のスクラブの胸ポケットのPHSが震えた。
急いで踵を返し院内に戻った。

題:街の明かり

7/8/2024, 9:20:58 PM