あの年の夏は、やけに音が遠かったの。
セミの声も、波の音も、君の笑い声も、
どこかでフィルターをかけたみたいな。
白いシャツが透けて、
背中の骨の形が見えちゃった。
触れたら、熱で指がやけどしそうで
ただ目を細めた。
かき氷のあおが舌に残って、
君がそれを指差して笑ってた。
わたしは笑い返せなくて、
かわりにスプーンを差し出した。
真夏の空気は、もうとっくに消えたのに、
あの時の匂いだけ、今もまとわりつくんだ。
塩と日焼け止めと、汗の混ざった匂い。
思い出すたびに、
胸の奥で少しあたたまる。
まるで海みたいに。
8/13/2025, 12:54:37 AM