紫櫻

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 終業時間となり、身支度をして会社を出る。
 今日の天気予報は朝から夜まで晴れ——の筈だった。

ザ————————……

 ……だったのだが、雨が降っていた。
 






ところにより雨







 思い出せば、天気予報でそんな事を言っていた気がしないでもない。
 傘は持って来ていない。頼みの綱の折り畳み傘も、別の鞄に入れた気もする。……やはり入っていなかった。
 全くついていない。
 今日は仕事でミスして怒られて、取り返しのつくミスではあるが、それにより持ち帰りの仕事もできた。デートの約束もあったのに、彼女は急な残業になったと連絡も来ていた。
 ところにより、というより、俺に雨が降っているような気がした。自意識過剰、と誰かに言われそうだから誰にも言わないけれど。
 家に帰って仕事をして、終わったら本でも読もう。

 ————目が覚めた。
 仕事をする、しかも怒られる夢を見るなんてどうかしている。
 デートは今日だ。
 付けたまま寝ていたらしいテレビで天気予報がやっている。

「**地方は今日1日を通して晴れですが、夕方から夜にかけて、ところにより雨でしょう」

 正夢だったのか——いいやまさか、そんなわけがない。寝ている間に聞こえた音が夢に影響すると聞いたことがある。
 雨が降らない事を祈り、折り畳み傘を鞄に入れておく。
 スーツに着替えて朝食を食べ、家を出る前、テレビを消そうとしたその時に見えた星座占いのラッキーアイテムは、奇しくも「折り畳み傘」だった。

3/25/2023, 5:52:19 AM