こんな夢を見た。宇宙服を着た私は何かを持って荒れ果てた土地を歩いている。その何かとは大きな瓶であり、中に白の大きな花弁がついた花が入っている。これは、ガーベラだろう。何故持ち歩いているのかは分からないが、とても大事なものな気がする。その時、耳元でノイズが聞こえた。私は無意識に耳元のツマミを回し、周波数を合わせた。
『…おい、見つけられたか?』
通信の向こうの男がぶっきらぼうに言う。見つけたというのはガーベラのことだろう。
「ええ、はい。ガーベラは見つけました」
報告すると、スピーカーから安堵のため息が聞こえた。やっぱり大事なものだったらしい。
『…良かった。やはり姉さんの日記の通りだ』
通信をしていく内に、今の状況を何となく理解できた。私が降り立った場所は生前彼の姉が営んでいた植物園で、日記にあった植物園の植物を回収しに来たこと。ここは地球で、大気汚染やら酸性雨やらが重なって人が住めなくなったこと。このガーベラは地球を救うかもしれないこと。
『枯れていない花を見つけられたのは大手柄だ。今の地球の環境に適応してるガーベラを研究すれば何か分かるかもしれない。俺たちは一歩前進したんだ』
もちろん、これ一本だけでは無理だ。私たちの船に持ち帰り、研究する必要があるらしい。
『何年かかっても絶対に地球に帰ってやる。だから、お前も最後まで手伝えよな』
それでも、たった一本のガーベラは彼にとってたった一つの希望なのだ。
「もちろん。地球を花いっぱいにしましょうね」
3/2/2026, 2:58:36 PM