しそひ

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失われた時間

「蝶羽ちゃん。僕ね、思い出したんだ。この世界に来る前…まだ生きてた頃の記憶を」
「まあ…」
「一週間ちょい前くらいかな?すごく頭が痛くなってさ、苦しんでいたらその記憶が溢れかえってきた。全部ね。僕だけ抱えてるのってなんか嫌でさ、蝶羽ちゃんに話したいんだけど、いいかな」
「ええ。是非聞きたいです」
「ありがと。簡単に言うと、僕…わたしには友達がいたんだ。今のわたしみたいな感じで、明るくて一緒にいると元気になれるようなひまわりみたいな子」
「自分で言うのですか…」
「それは今いいでしょ!?もー…あぁまあそれでね、その子を置き去りにしちゃって一人で死んじゃったの。そのときは何もかも嫌になっててさ、後悔とかは一ミリもなかった。でも…今になってもう少しまともに接してあげられたらよかったって、思っちゃってさ、…なんだろ、みんなが言ってることって本当なんだね、一緒にいる間に、感謝の言葉の一つも言ってなくて…」
「…大丈夫、ですか」
「……ごめんね、大丈夫、自分にムカついてきちゃってさ、こんな大切なことを忘れていたり、何気ない、特別じゃない時間を……何も無い空っぽな時間だと思ってた自分が……時間なんて戻ってくるわけないのに………なんで………」
「……少し休憩しましょう。話してくれてありがとうございます」
「うん……うん、ごめん、ちょっとだけ待って……」

「いや~いっぱい泣いちゃった!へへへ…ありがとうね」
「今」
「へ?」
「今言えてるじゃないですか、…私は、それでいいと思うんです」
「……なんで蝶羽ちゃんも泣きそうなの」
「ごめんなさい…一週間、独りで抱え込ませてしまって……友人失格です……」
「…んふふ、優しいね……大丈夫だよ、失くなっちゃった時間はもう戻ってこれないけどさ、これからの時間は過ごせるんだから。たくさん遊ぼうね……」

5/13/2024, 12:21:52 PM