恵美

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チョキ、チョキと花の茎を切る音だけが聞こえる。

私の手元には、美しい花々とそれらを包む包装紙があり、仕上げられた花束は感嘆の声を漏らすほど立派で、受け取った人が幸せそうな笑顔を向ける様子が目に浮かび、私も思わず笑みを漏らしてしまった。

花屋に就職して二ヶ月経ったが、最初は予想外の重労働に思わず溜息が出ていた。だが、慣れてくると植物と関われるこの仕事はなかなかに良いものだと私は思った。

何より、大切にお世話をした花や植物達が華やかに美しく着飾られて旅立ち、多くの人を笑顔にしていることが私の何よりの幸せだった。

今包んでいた花束は、あと少しでシーズンが終わる花を使っていて、最近は特に気に掛けながらお世話をしていた花だった。

もうしばらくは会えないと思ってしまったからか、なんだか一本、また一本と売れていくうちに名残惜しさが私の中で勝手に出てしまっていた。

包み終わった花束に、私はもう一度視線を落とす。

その花束は、堂々と自信を持ち、華やかに咲き誇る事を誇りに思っている様に見えた。

そして花束の一番中心は、シーズンが終わってしまうあの花だが、美しく咲き誇る姿を見てなんだか自分が馬鹿らしく思えてきた。

たとえこれで最後の一本だとしても、また季節は巡り、来年の今頃にはまた会えているだろう。
それに、この最後の一本は沢山の人に笑顔を届けてくれる。

ほんの少し暖かくなった私の心は、どこか春を思い出させた。

早くこの花にまた会えます様に。
私は、晴れやかな心持ちで花束を受け取るお客さんを静かに待っていた。
 
#これで最後

5/27/2025, 9:28:07 PM